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東京高等裁判所 平成4年(ラ)695号 決定 1992年10月16日

主文

本件抗告を棄却する。

理由

一  本件抗告の趣旨は、

1  東京地方裁判所が、同裁判所平成四年ヲ第二二二七号売却のための保全処分申立事件(基本事件・同裁判所平成三年ケ一〇六七号競売事件)について、同年七月二三日にした売却のための保全処分決定を取り消す。

2  相手方の右売却のための保全処分申立を却下する。

というものであり、その理由は、別紙執行抗告の理由書記載のとおりである。

二  そこで検討するに、抗告理由は、結局、抗告人が、基本事件の債務者・所有者である株式会社戊田の意思に基づき、もつぱら執行妨害を目的として、本件建物の占有を開始したとの原決定の認定、判断が誤りであるとするものであるが、一件記録によれば、本件建物は、新築後、しばらくは空き家であつたが、滌除権者(仮登記権利者である株式会社甲田)に対する実行通知及び差押えの登記後、これに近接して抗告人の占有が開始されたものであること、抗告人の主張する抗告人と乙田松夫との賃貸借契約(転貸借)は、敷金三〇〇〇万円であるのに対し、そのもととなつた乙田と本件建物の所有者である株式会社戊田との間の賃貸借契約は、敷金が一億円と転貸借よりも高額とされているうえ、両者の賃貸借とも、賃料が月額五〇万円、一二か月分前払いという内容のものであること、また、抗告人は、本件建物をこのような高額の賃料で借り受けたとしながら、それを留守にしていることが多いことなど、抗告人主張の賃貸借を正常なものと認めるにはあまりに不自然な諸事情が多く認められ、これらの事実に、抗告人の所持する本件建物の鍵は、右戊田の代表者であつた本宮から乙田に、乙田から抗告人に、それぞれ交付されたと認められることなどを総合すれば、抗告人が、株式会社戊田の意思に基づき、もつぱら執行妨害を目的として、本件建物の占有を開始したとの原決定の認定、判断は相当なものというべきであり、その過程に所論の誤りがあるものとは認められない。

三  よつて、本件執行抗告は理由がないから、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 篠田省二 裁判官 矢崎秀一 裁判官 及川憲夫)

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